JStories ー 日本の象徴的な地区である渋谷は、活気あふれる若者文化や「世界一混み合う交差点」として有名なスクランブル交差点など、多くの魅力によって世界中から人々を惹きつけている。特にハロウィーンの期間は、仮装した若者などが国内外から自然発生的に集まる国内有数のイベントとして近年海外の観光客からも注目されるようになった。
一方で、狭い路地で人々が集まって、過密状態となったり、器物を損壊したり、ゴミを散乱させる等といった迷惑行為が地域住民から問題視されるようになった。特に2018年に、一部の参加者によって小型トラックが横転させられる事件が発生して以降は、人命に関わる深刻なトラブルが懸念されるようになり、渋谷区はコロナ明けの2023年以降、昨年まで2年連続で、実質的にハロウィーンを禁止する措置をとっていた。
こうした中、渋谷区は、今年(2025年)のハロウィーンを安全・安心かつ秩序立って実施する為の対策を取った上で、マナーの遵守を呼びかける形で全面禁止を解除する方針を決定した。
渋谷区の長谷部健区長はJStoriesへのインタビューに対し、2025年の渋谷区のハロウィーンは全面禁止ではなく、「特定の迷惑行為」が禁止対象であると話した上で、期間中の10月31日から11月1日にかけては、路上喫煙、ポイ捨て、過度な騒音、そして仮装で通行の妨げとなる写真撮影などの行為について、警備員による厳格な見回りを行うなどの対策を取ると説明した。
渋谷区は、ハロウィーンを安全・安心かつ秩序立って実施するための予算として6,800万円を計上。区内の飲料小売店58店舗には、10月31日から翌日にかけて酒類の販売の自粛依頼を行った。さらに、安全確保のため、駅周辺の主要10地点に計125名の警備員を配置した他、待ち合わせの名所である忠犬ハチ公像周辺を封鎖して、通行者の滞留を抑制した。また、期間中延べ90人の職員を派遣し、路上飲酒や喫煙などを呼びかけるマナーの啓発活動や、ボランティアも街中を巡回し、来場者のサポートやごみ拾いを行った。
また、混雑を避けながらも渋谷ハロウィーンの雰囲気を擬似体験したい人のために、渋谷区はゲームプラットフォーム「Roblox」などを通じて、バーチャル上で渋谷の街を仮装して歩きながら、交流できる仕組みを用意した。バーチャル上では、マナーの啓発キャンペーンやごみ拾いゲームも実施しており、長谷部区長は「デジタルの場を通じて、世界中の人たちが“渋谷のカルチャーとマナー”を一緒に体験できるのは、とても意義のある挑戦だと思う。渋谷がリアルでもバーチャルでも、誰にとってもワクワクする場所であり続けることを願っています」とコメントしている。
渋谷のハロウィーンは23年以降の実質的な禁止の呼びかけにも関わらず「いわゆるハードコスプレイヤー、つまり本格的なコスプレ愛好者」の訪問数は増えており、地元住民と観光客の間で、イベントを楽しむ際の温度差や期待の違いが生じている。これを受けて渋谷区では「渋谷グッドマナープロジェクト」などの啓発活動を行っており、長谷川区長は、こうした対策が効果を示して「注意喚起の件数が大幅に減少する」などの改善が見られていると話す。例えば、『僕のヒーローアカデミア』や『劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク』に登場する初音ミクとのコラボレーションによる呼びかけが、外国人観光客の関心を引き、清掃活動への参加を促すきっかけとなったという。こうした施策が功を奏したのか、今年のハロウィーンは激しい雨が降ったこともあって、渋谷を訪れた仮装客はまばらで、大きな混乱も起きなかった。
翻訳:Mizuki Nakagawa | JStories
編集:藤川華子、一色崇典 | JStories
トップ写真:Lucas Maltzman | JStories
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