日本発のイノベーションを多言語で世界に配信しているソリューション特化型ニュースメディア「JStories」(運営会社:株式会社 パシフィック ブリッジ メディア アンド コンサルティング)は、アジア最大級のスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2025」の公式メディアパートナーに就任しました。本パートナーシップを通じて、JStoriesでは、「SusHi Tech Tokyo 2025」が掲げる「持続可能な都市を高い技術力で実現するという理念の下、都市課題の解決に向けた挑戦や東京の多彩な魅力を世界発信する」というミッションの実現に向け世界への情報発信の面でサポートしていきます。
JStories ー 東京都が主催する「SusHi Tech Tokyo 2025」が東京ビッグサイトで5月8日から10日にかけて開幕した。アジア最大級のスタートアップカンファレンスとなった同イベントでは、世界46の国・地域から657社のスタートアップが参加申込みを行い、613社が出展する規模に成長した。都知事の小池百合子氏は開会式の基調講演で、「持続可能な都市をハイテクで実現する」というイベントの理念を改めて強調した。
今年で3回目となる本イベントは、スタートアップ、投資家、大企業、自治体、学生など多様なプレイヤーが交流する場として定着している。「Future(未来)」「Enjoy(楽しむ)」「Action(体験)」をテーマに、AI、量子技術、フードテックなど最先端の技術に焦点を当てた135のセッションが行われる予定だ。
グローバル情勢とAI戦略

小池氏は講演で、世界の政治・経済情勢が大きく変動する中で将来の成長に不確実性が生じている点に触れ、こうした時代に必要なのは「創造」であると強調した。意欲ある個人が集まり知識を共有することで、不確実性を乗り越える力が生まれると説いた。
「もし私たちがさらに動揺すれば、未来を切り開くことはできません。何をすべきでしょうか。それは創造です。世界情勢が不安定であればあるほど、私たちには新たな発想と創造力が求められています。東京という都市が持つ強みを活かし、スタートアップと共に社会課題を解決する技術を育てていくことが、不確実性の時代を乗り越える鍵となるでしょう。今ここに集まった皆さんの知恵と情熱こそが、明日の東京、そして日本を形作るのです。」(小池氏)
特にAI技術については、数年前の予想をはるかに超えるスピードで進化していると指摘。東京都として今夏に初のAI戦略を策定し、行政サービスにおけるAI活用の「日本モデル」を構築する方針を明らかにした。さらに、量子コンピューティングの発展も支援していく考えを示し、AIが消費する大量の電力問題解決にも貢献していく姿勢を表明した。
グローバルな広がりを見せるSusHi Tech Tokyo
今年の「SusHi Tech Tokyo」は国際色がさらに豊かになっている。昨年の3倍となる16カ国・地域がパビリオンを出展するほか、大企業によるオープンイノベーション推進のためのパビリオンも29から47へと大幅に増加。グローバルなスタートアップエコシステムの結節点としての東京の存在感が高まっていることを示している。
都が立ち上げた都市課題解決のための国際ネットワーク「GNETS」では、昨年ヘルシンキでの炭素排出削減と台湾での血液リスク管理のプロジェクトを展開した実績を紹介。今年はジャカルタ(インドネシア)とマルメ(スウェーデン)で社会課題解決に取り組むスタートアップを支援する予定であることも発表された。

小池氏はまた、海外スタートアップと学生の交流を促進するインターンシッププログラムについても言及した。このプログラムでは、東京の大学生が海外からのスタートアップ創業者を数日間案内する「スタートアップアンバサダー」制度を新設し、日本の商習慣や東京のビジネス環境について説明したり、潜在的なビジネスパートナーを紹介したりする役割を担う。
また、東京の学生が海外スタートアップで短期インターンシップを行うも拡充し、昨年の30名から今年は100名規模に拡大する計画も発表。これらの取り組みを通じて、グローバルな視点を育み世界に挑む若者を増やしていく考えを示した。
多様性とエコシステム構築の重要性
小池氏は講演の中で、イノベーション創出には多様性が不可欠だとの認識を示し、特に女性のエンパワーメントに注力していることを強調した。2日目に予定されている「Empower Her Stage」と名付けられたセッションでは、女性活躍を含む多様性に焦点を当てた議論が行われる。
また、江戸時代に存在した循環型経済のDNAを東京が受け継いでいることを紹介し、東京の歴史的背景がサステナブルな都市づくりに貢献する可能性を強調。この独自性を活かした都市発展の可能性を示唆した。
「江戸のDNAを受け継いだ東京は、未来を創造する上で大きな強みを持っています。これは世界のどこにも見られない強みです。400年前の江戸時代、東京は既に循環型社会の先駆けとして、限られた資源を最大限に活用する知恵を培ってきました。木材や紙の再利用、食品廃棄物の肥料化など、今でいうサーキュラーエコノミーの実践が日常に根付いていました。
この持続可能性の文化を現代のテクノロジーと融合させることで、東京は環境問題やエネルギー課題に対する革新的なソリューションを生み出す独自のポジションにあります。私たちは先人の知恵と最先端技術を組み合わせることで、他の都市にはない持続可能な未来都市モデルを世界に発信していくことができるのです。」
東京都のスタートアップ戦略である「10×10×10イノベーションビジョン」については、5年でスタートアップ、ユニコーン企業、官民連携をそれぞれ10倍に増やす目標を掲げており、そのうち官民連携は初年度ですでに10倍を達成したと報告。また、5年間で10億ドル規模の支援計画も順調に進み、過去3年間で9億ドル相当の予算を計上済みであることを明らかにした。
グローバルな展開とサステナブルテック

小池知事は国際的なネットワーク構築にも積極的に取り組んでいる。昨年11月には中東訪問の一環としてエジプトとUAEを歴訪し、日本のスタートアップの技術と可能性をアピールした。特にUAEでは、アブダビ商工会議所会長のアフメド・ジャシム・アル・ザアビ氏らと共に、持続可能性、水のリサイクル、農業技術、健康技術などの分野で日本企業の代表団とハイレベルなビジネスミーティングを実施したことを紹介した。
また先月にはパリを訪れ、ヨーロッパ最大級のスタートアップ・インキュベーション施設「Station F」で活動する日本のスタートアップと面会。小池氏は、世界の関係者との対話を通じて東京の次なるステップの必要性を認識したとして「サステナブルテックを持つトップレベルのスタートアップのグループを形成し、人材や資金などの分野で無償支援する」新たな取り組みを発表した。
講演の最後に小池知事は、エコシステムプレーヤーの拠点づくり、大企業とのオープンイノベーション、全国的連携、世界との交流、そしてアジア最大級のスタートアップカンファレンス開催という5つの取り組みを通じて、世界で活躍できる大企業に成長するスタートアップを迅速に軌道に乗せる努力を続けていくと力強く締めくくった。
記事:池田将
編集:一色崇典
トップ写真: JStories (池田将)
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