JSTORIES ー サステナブルな社会を実現する”アジアのイノベーション・金融ハブ”東京の実現に向け、東京都が一昨年から行っているアジア最大規模のスタートアップ国際会議、SusHi Tech Tokyo。
3回目の開催となる「SusHi Tech Tokyo 2025」では、参加者5万人、海外VCは500社以上、ビジネスミーティングも5000を超すという過去最大の規模をめざしており、世界から資金や人材、技術・情報を呼び込む世界有数の国際会議の成功に意欲を燃やしている。
東京都はどのようなビションを持ってこの大規模イベントの企画、実現に取り組んでいるのか?この会議によって、東京都や日本のスタートアップエコシステムにどのような好影響を期待できるのか。東京都副知事の宮坂学氏が記者の質問に答えた。(こちらの記事は、1月30日に行われた記者会見を再構成したものです)
Q:SusHi Tech Tokyoは一昨年始まったばっかりの新しいイベントですが、今後、どのぐらいの時間をかけて、スタートアップを日本と海外でも活躍できる企業に育て上げていくのか、などという数値目標はありますか?
宮坂学副知事
SusHi Tech Tokyoには「何年先にこれぐらいの売り上げを出すスタートアップをこれだけ出したい」といった明確な目標はありません。
ただ、数値目標としては3つ持っていて、まず一つ目は起業する人の数を東京で10倍にする。二つ目は、東京、日本から世界に飛び出していく「ゴーグローバル(Go Global)」のスタートアップの数を10倍にしたいと思っています。そして最後に三つ目は、行政がスタートアップの製品を調達したり、買う数を10倍にすること。この三つの「10倍」という目標を掲げています。これは必ずやり遂げたいと思っている目標です。
一方で、そういった数値目標も大事ですが、もう一つ我々が大事にしていることがあります。東京都は、アート、エンターテイメント、料理とか、本当にいろんな分野で挑戦者がたくさんいる都市です。
スタートアップは、ある意味でビジネスの世界における挑戦者ですよね。ビジネスに限らず、ありとあらゆる分野で挑戦する人が東京都からもっとたくさん生まれて、世界に挑戦したい人が東京都を舞台にやってみたいと思えるような街にしていきたい、というのが東京都が掲げているビジョンです。
こうした3つの数値目標に加えて、SusHi Tech Tokyoなどを通じて、挑戦者に優しい街になっていくというのが目標です。
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Q:昨年との違いはどのようなものがありますか?
宮坂学副知事
去年との違いでいえば、まず参加スタートアップの数、来場者数、海外から出展する都市や、海外のスタートアップエコシステムとのパートナーシップに基づく出展の数、そういった数が量的に増える事が大きな変化だと思います。
そうした量的な変化とは別に、質的な変化もあります。去年までは、ビジネス、行政、金融の関係者だけが集まるイベントという側面がすごく強かったと思いますが、今年は最終日に学生も含め、誰でも入場可能なパブリックデーがあります。東京都の若者だけでなく、一般の方が子連れで最終日に来ていただいて、都市の未来がこういう風になるんだ、と学べるイベントにしたいと思っています。このイベントは、ビジネス、行政関係者だけではなく、みんなの生活に関係のあることが展示されています。そこが去年になかった一番大きな質的な変化だと思います。
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Q: 誰でも参加できるパブリックデーについての話がありましたが、イベントを幅広く多くの人に認知してもらうための取り組み、学生向けのプログラムなどがあれば教えてください。
宮坂学副知事
東京都には、たくさんの高校生がいます。彼らに、世界から来たビジネスパーソンと話せる機会を作ってあげたいと思っています。スタートアップのイベントなので、ビジネスパーソンといっても、比較的若い人たちです。ですから、高校生から見ると、それほど年の離れてない若者が、日本という海外に来て、一生懸命に仕事をしている姿を見てもらうことができると思います。東京都は、今、英語教育に力を入れていますので、今回のイベントが実際に英語を使う一つのきっかけになればいいなと思っています。
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Q: SusHi Tech Tokyoは、以前から海外の出展者が非常に多いのが一つの特徴ですが、今年は更に増やそうとしています。海外の企業、スタートアップが東京に集まることによって、都民や地元のスタートアップ企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
宮坂学副知事
国内のスタートアップ企業に関して言えば、日本の国内市場だけを相手にして成長する選択肢もあるとは思いますが、世界は広いです。世界の市場にアクセスしやすくするためにも、海外のいろんな関係者に来てもらった方が、国内だけで大きなスタートアップを作るよりも、圧倒的に(海外進出を実現できる)可能性が高いと思いますので、(イベントには)海外のスタートアップ、VC、行政関係者を集めています。
それもあって、イベントで使う第1言語は英語にしています。正直、初年度の開催時は英語限定のイベント、第1言語が英語で、第2言語が日本語のイベントをこれまでやったことがなかったですし、新型コロナ感染症の直後だったので、本当に人が集まるのかな?と我々としてもリスクや不安を感じていました。しかし、いざやってみると半分以上の来場者は本当に海外から来てくれました。それに対して、日本の参加者も英語が上手い下手は関係なしに、一生懸命コミュニケーションを取ろうとしていて、やってよかったなと思いましたね。
今年も、ぜひ多くの海外の方に来てほしいし、中でも特にアジアの方にぜひたくさん来てもらいたいと思っています。
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Q: SusHi Tech Tokyoは今後、どのような姿を目指していくのか?
宮坂学副知事
まだできたばっかりのイベントですけれど、続けることが大事だと思います。何年も何年もやめずに続けて、経験を蓄積することが大事ですので、まずは必ず続けていきたいと思います。
そして今、日本のスタートアップだけでなく、他のビジネスでも、海外に進出する日本企業の話はよく聞きます。海外の国際会議やイベントに行く日本企業の例は本当にたくさん聞くのですが、海外企業が日本に来るという話はそれほど聞きません。
日本は、世界の中でも経済的に大きな国ですから、年に1回ぐらいは海外のビジネスパーソンが必ず日本に来るという慣習を作りたいという思いは強く持っています。
5月の東京は、天気も非常に良い時期です。世界中から革新的な技術を持つスタートアップ、資金力のあるベンチャーキャピタル、金融機関、そして政策を考えるべき行政担当者などのスタートアップ関係者が「毎年5月には東京に行こう」と事前にスケジュールを押さえ、我々の住む都市をこれからどうやって変えていこうか様々な視点で話し合っていけるような、そういったイベントに近づけていきたいなと考えています。
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記事:一色崇典
編集:北松克朗
トップページ写真:東京都
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