J-STORIES ー 石油原料を使用しない人工タンパク質繊維を開発、製品化しているバイオ素材企業、Spiber(スパイバー、山形県鶴岡市、関山和秀社長)が、海外での量産や自動車向けなどの新市場開拓に力を入れている。海外では今年5月のタイ工場の稼働に続き、早ければ来年にも米国工場が動き出す見通し。一方、再生エネルギーの活用など製造過程での脱炭素化も進める方針だ。
同社が開発したのは人工タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」。タンパク質は20種類のアミノ酸が直鎖状に数十個から数千個結合した分子構造をもち、その並べ方や組み合わせ方はほぼ無限大にある。
同社では用途に合わせたタンパク質を作り出すため、その膨大な組み合わせを計算し、微生物に組み込む遺伝子の配列を設計・合成する。その微生物を大規模に培養しタンパク質素材を生み出す。
綿や麻、カシミヤやシルクなど自然界にある様々なタンパク質素材は使用後の製品回収や再利用に高いコストがかかり、最終的にゴミとして焼却処分されることが多い。同社によると、ブリュード・プロテインは付加価値を高めて再利用することが可能で、持続可能な資源サイクルに道を開く素材という。
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同社は国際的なアパレル企業のGoldwinやThe North Faceなどと組んでブリュード・プロテインを組み込んだ製品を展開している。今年6月からは、サステナブルファッションメーカーのPANGAIAを通じ、ブリュード・プロテインを使ったパーカのグローバルなオンライン販売を始めた。
5月に稼働したタイの工場では、年間数トンにとどまっている日本国内の製造能力を大幅に上回る同数百トンの生産をめざす。また、米ADM社と共同で計画しているアメリカの工場では数千トンの大量生産が可能になる見通し。早ければ2023年頃の製造開始を目指している。
ブリュード・プロテインは、衣服だけでなく、人工毛髪や自動車のドアパネルやシートとして活用できる可能性もある。自動車向けについては、トヨタ自動車の内外装部品を生産している小島プレス工業(愛知県・豊田市)と組んで、鉄に代わる新素材の開発を進めている。実現すれば、車体の軽量化にもつながり、燃費の改善とCO2削減も期待できる素材だ。
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関山さんは、慶応大学大学院時代から高い強度と伸縮性を持つクモの糸を衣服の素材として人工合成する研究を続けてきたが、技術的な壁に突き当たり、たんぱく質繊維の開発に方針を変更した。高校時代にアフリカ・ルワンダの悲惨な内戦を映像で知り、資源の奪い合いをなくす技術を開発したいという思いがブリュード・プロテインにより実現に近づいた。
同社の広報担当、浅井茜さんはJ-Storiesの取材に対し、ブリュード・プロテインは主原料に石油資源を使用していないため、微生物など自然の力による生分解性に優れているなどの利点はあるが、現時点では化学繊維と比べて、製造に必要な電気エネルギーの使用量は多くなっていると指摘した。今後は再生エネルギーに100%切り替えることも検討し、さらなる環境負荷の軽減を進めていきたいと話している。
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記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:Spiber 提供
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