交通費が実質無料に 過疎に苦しむ世界中の地域を活性化する新アプリが登場

北海道島牧郡島牧村で実証実験がスタート

10月 6, 2023
BY AYAKA SAGASAKI
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J-STORIES ー 豊かな観光資源を持ちながら、交通が不便、地元の魅力をうまくアピールできないなどの理由で過疎化を強いられている地域は少なくない。そうした地域の活性化を支援しようと、訪れる観光客の往復の交通費を実質無料にできるこれまでにないアプリが登場した。
アプリ操作映像と北海道島牧村の映像。     Fourwin 提供
このアプリは、旅行者が交通費を払うという常識を覆し、訪問先の自治体や宿泊施設、飲食店などが旅行者の交通費を負担する仕組みで、条件を達成すると最大で往復交通費分の費用を獲得できる。旅行客は遠方にも実質無料で行くことができ、受け入れる現地では観光客が増える、という双方にとってのメリットがある。
Free Traffic の効果。     Fourwin 提供
Free Traffic の効果。     Fourwin 提供
Free Traffic の仕組み。     Fourwin 提供
Free Traffic の仕組み。     Fourwin 提供
実証実験の期間。     Fourwin 提供
実証実験の期間。     Fourwin 提供
アプリを開発したのは、ベンチャー企業のFourwin(東京都中央区)。代表取締役の永瀬駿平(Shunpei Nagase, CEO)さんは「ITの力で世界の貧困などの社会問題を解決したいと長年考えていた」と語る。永瀬さんは、2022年に行われた東京大学主催のアイデアソンで最優秀賞を獲得した仕組みを使い、Fourwinを設立した。
旅行者は、旅行の出発地点と到着地点の通過をGPSで確認すること、そして対象となる宿泊施設や飲食店で支払いをすること、という二つ条件を満たせば、移動にかかる交通費相当のポイントを獲得、現金やPayPayポイントなど電子マネーに交換できる。1泊あたりの上限金額を設けているが、宿泊数が多くなれば上限が上がるため、遠方から来ても実質無料になる。
代表取締役の永瀬さんインタビュー動画。     Fourwin 提供
島牧村地域おこし協力隊員の刑部広平さんインタビュー動画。     Fourwin 提供
同社では今年9月22日から11月30日まで、北海道島牧郡島牧村で同サービスの実証実験を行っている。島牧村は北海道の南西部に位置する自然に囲まれた美しい村だが、人口は約1300人と近年減り続け、就労機会の創造などの観点からも観光業の振興が求められており、双方の利害が一致した。
参加定員は最大100人、今回は特例として交通費を算出する際の移動手段を車とし、移動距離と1キロ当たりのガソリン代から算出された金額を往復交通費と規定、1泊あたり6000円を上限としてそれを超えない範囲でのポイントが付与される。海外からの旅行客は、国内に到着した地点を起点として参加することができる。
Free Traffic 対象店一覧。     Fourwin 提供
Free Traffic 対象店一覧。     Fourwin 提供
島牧村「地域おこし協力隊」の刑部広平さんは「島牧村のような(過疎)地域での実施は地方創生に新たな道を開く可能性があり、成功すれば北海道全体、そして日本全体にもポジティブな影響を与えるだろう」と語り、FreeTrafficを「地域経済と観光を同時に促進する画期的な取り組み」と評価する。
Free Traffic 対象店一覧スライドショー。     Fourwin 提供
同村役場も「地域を活性化させる一つの手段を提案できた。当村での実証実験の結果をもとに、今後の観光振興対策を考えるきっかけの一つとなるのではないか」(企画課の中山貴浩課長)と期待を寄せる。
今の実証実験は国内限定で、車での移動を想定した算出方法でのポイント付与になるが、ゆくゆくは「FreeTraffic」の名の通り、鉄道、車、航空機や船などあらゆる交通手段を対象にする計画。1泊当たりの上限金額も引き上げ、とくに海外から日本への観光客にも積極的に利用してもらいたいという狙いもある。
永瀬さんによると、当初の目標は「島牧村をはじめ5カ所ほどの地域で実証実験を行ったのちに、2025年までに正式版をリリースする」ことだ。その後は、「2033年までに国内1200自治体、2043年までに世界2万自治体への導入を目指す」という。
永瀬さんがめざすのは、FreeTrafficが社会インフラのようにあたりまえに利用され、誰もが交通費の心配をせずに世界中、好きなところへ自由に移動し、地方や各国の経済が活性化する未来だ。「FreeTrafficは世界の社会問題を解決する可能性を持っていると信じている」と永瀬さんは話している。
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗 
トップ写真:Fourwin 提供
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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