ホームレスが撮影した写真集

偏見や誤解をなくすきっかけに

6月 24, 2022
by yui sawada
ホームレスが撮影した写真集
この記事をシェアする
J-STORIES ー 失業、病気、家庭内の事情などで住む場所を失った人たちは、ホームレス生活を続ける中で社会から切り離され、体を壊したり、時にはいじめや暴行を受けるリスクにもさらされる。彼らへの差別や嫌悪をなくし、理解を深める方法はないのか。
大阪に拠点を持つ認定NPO法人Homedoorが考えたのは、彼らが撮影した写真を本にして出版することだった。
路上生活者だけでなく、定職を持たずにネットカフェなどで寝泊まりしているホームレス状態の人に使い切りカメラで写真を撮影してもらう。彼らの視線がとらえた社会の姿、これまでの記憶や思い出につながる画像を写真集として出版する。多くの人には身近な問題として捉えにくいホームレス生活の実態や心の内を写真として共有し、偏見や誤解をなくしていこうという試みだ。
写真集にはホームレス状態の人が撮影した写真だけでなく、その写真を撮影した背景や自らの想いを彼らの言葉で掲載している。それらを通して、読者に撮影者それぞれの個性や人柄に触れてもらいたいとしている。
Homedoorの事務局長を務める松本浩美さんの印象に残った1枚の写真がある。カメラを渡されたホームレスの人がまっさきに取ったのは美術館の遠景だった。彼にとっては、かつて自分の子供の絵が展覧会に選ばれた思い出の場所だった。
Homedoorの事務局長・松本さんの印象に残った、大阪私立美術館の写真。     Homedoor 提供
Homedoorの事務局長・松本さんの印象に残った、大阪私立美術館の写真。     Homedoor 提供
Homedoorは、ホームレス状態を生み出さない日本にすることを目標に2010年から活動を始めた。写真集を出版するというアイデアは、ホームレス状態の人に写真を撮影してもらうという2017年の広告代理店の企画がきっかけだった。
企画が終わった後も、広告代理店の人含め、多くの人に共感を得た写真は、クラウドファウンディングで500人以上の協力を得て2022年4月に出版を実現した。
アイムとは「I am」(自分であること)を意味している。     Homedoor 提供
アイムとは「I am」(自分であること)を意味している。     Homedoor 提供
Homedoorの事務局長を務める松本浩美さんはJ-Storiesの取材に対し、「ホームレス問題は誰にとっても身近な問題。手を差し伸べてくれる人や環境がないと誰でも簡単に社会のセーフティネットから転げ落ちてしまう」とし、「この写真集でホームレス問題を知ってもらい、考えるきっかけを提示する。その上で、どのようなアクションを起こすか、ご自分で考えていただきたい」と話す。
個々の写真は専用のウェブサイトにて購入可能だ。     Homedoor 提供
個々の写真は専用のウェブサイトにて購入可能だ。     Homedoor 提供
Homedoorは新たな取り組みとして、今年の7月頃から、社会制度や支援団体の在り方が生活に困っている人にとって本当に必要なものかをヒアリングも含め調査する予定。その結果をもとに、制度や支援の社会的な必要性を再検証し、年末頃には学術論文として発表する計画だ。
松本さんは、Homedoorの在り方について「ホームレスの人の数をゼロにしたいわけではなく、失業、病気、家庭内の事情で望まずにホームレス状態になってしまった人が、何回でもやり直せる、本人が望めば再出発できる環境がどんな状況の人にも整っている社会を作りたい」と話した。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗 
トップ写真:Homedoor 提供
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

***

この記事に関しては動画(英語)でもお伝えしています。

***

本記事の英語版は、こちらからご覧になれます。
コメント
この記事にコメントはありません。
投稿する

この記事をシェアする
提携プレスリリース
プレスリリース配信・世界最大手広報通信社
ニュースレター
ニュースレター購読にご登録いただいた皆様には、J-Storiesからの最新記事や動画の情報を毎週無料でお届けしています。