ネクストミーツの「地球を終わらせない」挑戦

代替肉の次は培養肉、昆虫食も視野に

9月 22, 2022
by ayaka sagasaki
ネクストミーツの「地球を終わらせない」挑戦
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J-STORIES ― 「地球を終わらせない」を企業ミッションに掲げる代替肉ベンチャー、ネクストミーツ(本社:東京都新宿区、佐々木英之CEO)が、国内外で拡販・普及戦略を加速している。代替肉を世界の日常食として定着させるため、アジアだけでなく、大消費地である欧米市場の開拓も推進。国内では飢餓問題への支援と連動した植物性バーガーや人工皮革バッグの販売を手掛けるなど、社会貢献型ビジネスの展開にも意欲的だ。
大豆などを原料とする代替肉市場は、「Beyond meat(ビヨンド・ミート)」と「Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)」の2大メーカーがけん引する米国市場をはじめ、日本を含め世界的に市場が拡大している。
日本の専業ベンチャーとして2020年に創業したネクストミーツは、翌年1月、自社のSPAC(特別買収目的会社)が米証券市場OTCブリティンボードに上場し、時価総額は最⾼値で40億ドル(約4,400億円)を超えた。その97%の株式をネクストミーツが保有しているため、同社は創業から史上最速で時価総額約4,400億円を記録したユニコーン(企業価値が10億ドル以上の非上場企業)となった。 
現在の主力商品は味つけ済みの冷凍食品である「NEXTカルビ」と「NEXTハラミ」。調理すれば見た目も味わいも牛肉に近いという評価が多い。今年6月には、レンジで温めるだけの冷凍の代替肉惣菜「ネクストイーツ」シリーズを新しく発売し、コロナ禍の内食需要も追い風となって、家庭の食卓への浸透度を高めている。 
一番人気の「NEXTカルビ」は、しっかりした歯ごたえで香ばしさもある。1枚1枚が大ぶりで、見た目も肉に近く、満足感を得られるという。    ネクストミーツ提供
一番人気の「NEXTカルビ」は、しっかりした歯ごたえで香ばしさもある。1枚1枚が大ぶりで、見た目も肉に近く、満足感を得られるという。    ネクストミーツ提供
また、焼き肉レストランの全国チェーン「焼肉ライク」と協業し、代替肉メニューを店舗内で提供しているほか、今年は横浜高島屋で地下食品フロアにあるブランドが一斉に同社の代替肉を使った食品を販売する大規模イベントを実施。さらにプロの料理人を対象にしたレシピコンテストを開くなど、代替肉消費のすそ野拡大への活動も積極的だ。
レンジで温めるだけで、ラザニアやビーフシチューなど、ちょっとしたごちそうが手軽に味わえると人気の冷凍総菜「ネクストイーツ」。    ネクストミーツ提供
レンジで温めるだけで、ラザニアやビーフシチューなど、ちょっとしたごちそうが手軽に味わえると人気の冷凍総菜「ネクストイーツ」。    ネクストミーツ提供
海外事業では、米国、シンガポール、香港でも商品を展開している。同社CMOの牧野勇也さんはJ-Storiesの取材に対し、「日本食に代表される味の繊細さは海外でも高い評価を得ており、日本発ブランドの強みが生きている」と国際的な事業展開に自信を見せる。  
こうした普及活動の推進は、利益最優先ではなく、代替肉ビジネスを通じて社会貢献を進めるという同社の企業精神が背景にある。佐々木英之CEOはメディアとのインタビューのなかで、「持続可能な社会に向けて貢献できるビジネスをしたい、という思いがまずあり、代替肉に関心をもつようになった」と創業の動機を語っている。
そうした社会貢献型の新サービスとして、同社は昨年8月にUSTUS(東京都新宿区、新田拓真代表取締役) が運営するBurgers Tokyoで植物性100%のハンバーガーの提供を始めた。飢餓に苦しむ人々への給食支援と連動した事業で、1周年となる今年8月には第2弾の新メニューも登場した。 
一方、7月には森をつくる農業「アグロフォレストリー」への貢献を進めるアマゾンフルーツの輸入販売加工会社、フルッタフルッタ(本社:東京都千代田区、長澤誠代表取締役)と製品開発や販売協力などで提携。さらに、東レが開発、製造した人工皮革のトートバックをネクストミーツのオンラインショップで販売するという異色のコラボも始まった。東レによる素材自体のサステナビリティーなどがネクストミーツの企業理念と一致した、というのが異分野の商品を手掛ける理由だ。
新潟県長岡市にある自社ラボでは、原料となる大豆を改良するためのゲノム編集、発酵、微生物研究などへの取り組みも行なっている。
新潟県長岡市の自社ラボでは、フランス、ロシア、中国から研究者らが集まり、国際的な環境の中で研究、開発が行われている。    ネクストミーツ提供 
新潟県長岡市の自社ラボでは、フランス、ロシア、中国から研究者らが集まり、国際的な環境の中で研究、開発が行われている。    ネクストミーツ提供 
今後の事業について、牧野さんは代替肉だけでなく、将来的には培養肉、昆虫食なども視野に入れていると述べ、「代替食が肉や魚と並ぶ新たな食材という位置づけになることをめざしている」と食文化の変革に意欲を示している。 
記事:嵯峨崎文香 編集:北松克朗 
トップ写真:composter-box / Envato
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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