世界初の人工流れ星

地球を救い宇宙を活用する未来めざす

4月 14, 2022
by yui sawada
世界初の人工流れ星
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J-STORIES ー 夜空に降り注ぐ美しい流れ星。その輝きを科学の力で再現するだけでなく、地球の持続可能性を高める情報を集め、宇宙を人類の文化圏に変える未来につなげる。そんな壮大な構想を掲げ、実現すれば世界初となる「人工流れ星」の開発に取り組んでいる企業がある。
「宇宙スタートアップ企業」として2011年に創業したALE(東京都・港区)。流れ星の素となるパチンコ玉程度の丸い素材(流星源)を宇宙空間に運び、衛星から放出、夜空にきらめく流星群を再現する計画だ。
直径1cmほどの丸い素材を人工衛星からガスの圧力で押して放出する     提供:ALE
直径1cmほどの丸い素材を人工衛星からガスの圧力で押して放出する     提供:ALE
自然の流れ星の発光は、宇宙の塵が地球の大気圏を超音速で飛行する際、空気が強く圧縮されて高温になる「空力加熱」の原理による。同社は独自の技術で「空力加熱」現象を起こし、流れ星の光を人工的に作り出す。
すでに、流星源を載せる小型衛星を自社開発。その衛星は2019年、2回にわたり宇宙航空研究開発機構(JAXA)のイプシロンロケットに搭載されて、宇宙に打ち上げられた。ただ、衛星部品の一部が正常に動作せず、2020年に実現する予定だった世界初の人工流れ星は延期を余儀なくされた。しかし、同社は人工流れ星としての要素技術は完成しており、現在開発中の人工衛星を利用して2023年初期での実現は可能としている。
放出された流れ星は、地上において直径約200kmの範囲で鑑賞することができる     引用: ALE ホームページ
放出された流れ星は、地上において直径約200kmの範囲で鑑賞することができる     引用: ALE ホームページ
人工流れ星の開発について、同社は3つのプロジェクトを掲げている。
まず、宇宙という広大なキャンバスを多くの流れ星で彩る宇宙のライブエンターテインメント事業。これを見た人々に、宇宙の素晴らしさと科学研究への理解や支援の気持ちを高めてもらおうという狙いだ。
地球の持続可能性(サステナビリティー)に貢献する事業として注力しているのは、同社独自の技術を通じて収集する地球の大気データの活用だ。同社は、宇宙からの情報で地球上の災害被害を少しでも減らしたいとの想いから、2021年9月に産学連携プロジェクトAETHERを発足させた。日本電信電話株式会社(NTT)、理化学研究所、国立天文台と共に気象衛星の開発を進めている。
燃え尽きていく流れ星の軌道や発光を手がかりに大気データを取得、新たな地球観測の方法を模索している      引用: ALE ホームページ
燃え尽きていく流れ星の軌道や発光を手がかりに大気データを取得、新たな地球観測の方法を模索している      引用: ALE ホームページ
さらに、JAXAと共同で宇宙デブリ(宇宙ゴミ)対策事業も行っている。宇宙空間にある人工物のデブリ化を防ぐ装置の特許を現在申請中。その装置を搭載した実験用小型衛星を今年中に打ち上げる予定だ。
同社創業者の岡島礼奈さんはJ-Storiesの取材に対し、人工流れ星プロジェクトを通じて、今後地球上で起こりうる自然災害等を「予測できるようにデータを役立てていきたい」と語った。
「大気データを地球全体の地形や海のデータなどに組み合わせることで地球の健康状態がわかるようになるかと思う。地球のメカニズムが中長期的にわかることによって、本当の意味で(望ましい形の)地球の開発につながるのかもしれない」と岡島さんは話している。
2011年のしし座流星群を見て、「流れ星は人工的に実現できるのでは」と発想したALE創業者の岡島さん.    引用:ALE ウェブサイト
2011年のしし座流星群を見て、「流れ星は人工的に実現できるのでは」と発想したALE創業者の岡島さん.    引用:ALE ウェブサイト
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗 
トップ写真:ADDICTIVE_STOCK/Envato
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