J-STORIES ー 戦禍のウクライナから隣国ポーランドに避難している子供たちを励まそうと日本の高校生たちが綴った手紙約300通が、現地に届けられず、手紙を託されたNPOが苦境に立たされている。新型コロナウイルスへの感染で途中の帰国を余儀なくされたためで、同NPOでは再渡航への資金支援を呼び掛けている。
ウクライナの子供たちに手紙でエールを送ろうと呼び掛けたのは、国内外で戦地や被災地の子供たちへの支援を行なっているNPO法人「アースウォーカーズ」(福島県福島市)。高校生たちから集まった手紙には「早く戦争が終わりますように」など、英語やウクライナ語で子供たちに寄り添う励ましのメッセージが書かれている。
アースウォーカーズは手紙を届けるため6月にポーランドに向かった。しかし、別の支援活動のために立ち寄ったイラクで代表者らがコロナに感染し、志半ばで日本に帰国。現在、再渡航を準備しているが、資金難のため、まだ見通しが立っていない。
同NPOの代表を務めているフリーランスカメラマンの小玉直也さんは新たな募金活動を全国で開始。手紙を届けるための渡航滞在費に30万円、ポーランドの現地NGOへの医療品、食料品、文房具などの支援のために100万円、の計130万円を目標に寄付を集め、9月にまたポーランドへ向かう計画をしている。しかし、これまで集まった寄付は20万円ほどにとどまっている。
「ウクライナの子供たちは毎日を不安と絶望の中で生きていて、 アジア にある日本からの手紙を受け取ったことなどない。『世界地図の一番端っこの島国の子供たちが自分たちのことを心配してくれている 』と思えること自体が、励ましにつながる」と、約20年間に渡って国内外の様々な社会貢献活動に携わってきた小玉氏は語る。
日本の高校生たちにとっても、ウクライナの子供たちへ直接手紙を書くことは世界の現状を身近に考えるきっかけになったという。
「日本の子供たちの多くは、ウクライナの状況をテレビの中の遠い国の出来事としてとらえている。(手紙を書くことは)島国国家である日本に暮らす子供たちが平和について前向きに考え、ウクライナの現状を身近に思う体験になった」
小玉さんは、励ましの手紙をきっかけに、高校生たちが「日本とウクライナの将来の架け橋になっていくことを願っている」と話す。
小玉さんはアースウォーカーズの活動を「将来への種まき」と表現する。「(手紙のやりとりなどを通して)平和を願う子供たちが増え、21世紀の中盤になってそういう子供たちが社会を動かすようになった時に、平和を世界で広めて欲しい」と小玉さんは語っている。
記事:前田利継 編集:北松克朗
トップ写真:mstandret / Envato
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