J-STORIES ー 植物が持つ「乾燥に強くなるメカニズム」を酢酸の力で活性化させる日本企業のバイオスティミュラント(植物活性剤)が、気候変動による干ばつや森林火災への対策として関心を集めている。開発企業では同製品を来年以降、大規模な火災被害があったカリフォルニアでの植林事業や雨量の減少に悩むウガンダ北部での農業支援にも投入する予定だ。
同社のバイオスティミュラント製品「Skeepon(スキーポン)」は、このメカニズムを活用、遺伝子組み換え技術に頼ることなく、植物に人工的に酢酸を与えることで乾燥への耐久性を強化できる。酢酸を主成分としており人や環境にやさしい製品であるだけでなく、通常の半分程度の水量で植物の栽培が可能になり、日中の気温が50℃近くなる猛暑でも植物を維持することができるという。
金さんによると、スキーポンは「これまで世界に存在していなかった植物を乾燥から守る方法」。そのメカニズムに「一番詳しい自分が世界に広げていく」との思いから会社を設立、事業化に乗り出した。
アクプランタでは、今年6月の第三者割当を含め、これまでに2.6億円の事業資金を調達している。出資に応じたグリーベンチャーズ社(東京都港区・代表:相川 真太郎)はJ-Storiesの取材に対し、「アクプランタの バイオスティミュラント資材は気候変動ならびに食糧不足に対応するソリューションであり、地球的な課題の解消に向けての事業推進を期待している」と話している。
同社では、国内だけでなく海外でのスキーポンの市場拡大をめざす方針で、すでに中国、インド、オーストラリアなど現在30カ国で国際特許を出願している。来年は1月から、気候変動によって雨量減少が続いているウガンダでの実証実験を始め、カリフォルニアの植林での導入を控えている。
今年11月、駐日ウガンダ大使がスキーポンを使っている静岡県藤枝市のミニトマト農家を訪問、暑さ対策への効果などを視察した。同農家では、夏場のビニールハウス内の温度が夏場は40°Cを超えることもあり、生産は止めていたが、昨年9月から今年の11月の1年間、スキーポンを使用したところ、年4回だった収穫回数は年5回に増え、収量は通常の2倍になったという。
金さんはJ-Storiesの取材の中で、気候変動の影響があっても、人々がいま住んでいるところで生産が続けられる環境をスキーポン事業によって実現したい、と抱負を語った。「干ばつ、乾燥で困っているところでは、生活している人の基盤自体が失われ、どこかに移住しないといけなくなるとすれば、その人たちが培ってきた文化が失われる。それを植物や植物学の力を使ってできる限り守りたい」と金さんは話している。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップページ写真:yanadjana/Envato
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