[PODCAST] 外国人創業者が変える日本のスタートアップの形 (Part 4)

In partnership with Disrupting JAPAN

7時間前
BY DISRUPTING JAPAN / TIM ROMERO
[PODCAST] 外国人創業者が変える日本のスタートアップの形 (Part 4)
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JStoriesでは、革新的な取り組みを行う日本のスタートアップを海外に紹介している人気ポッドキャスト番組 Disrupting JAPANと提携し、同番組が配信している興味深いエピソードを日本語で紹介しています。以下にご紹介するのは、Antler Japanのパートナーであり、スタートアップエコシステムの発展に尽力しているサンディープ・カシさんとのインタビューで、複数回に分けて記事をお送りします。
*オリジナルの英語版ポッドキャストは、こちらで聴取可能です。
Disrupting JAPAN:Disrupting JAPANは、Google for Startups Japan の代表で東京を拠点に活動するイノベーター、作家、起業家であるティム・ロメロ氏が運営するポッドキャスト番組(英語)。ティム氏が数年後には有名ブランドになるポテンシャルがあると見出したイノベーティブな日本のスタートアップ企業をピックアップして、世界に紹介している
Disrupting JAPAN:Disrupting JAPANは、Google for Startups Japan の代表で東京を拠点に活動するイノベーター、作家、起業家であるティム・ロメロ氏が運営するポッドキャスト番組(英語)。ティム氏が数年後には有名ブランドになるポテンシャルがあると見出したイノベーティブな日本のスタートアップ企業をピックアップして、世界に紹介している
Disrupting Japan の創立者で自ら番組ホストも務めるティム・ロメロ氏
Disrupting Japan の創立者で自ら番組ホストも務めるティム・ロメロ氏

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今回は、起業家であり、世界的なベンチャーキャピタルAntler(本社:シンガポール)の日本法人であるAntler Japanでパートナーを務めるサンディープ・カシさんにお話を伺います。
ベンチャーキャピタル(VC)には「アイデアには誰も投資しない」という格言があります。これは、アイデアは簡単に思いつくもので、それだけではほとんど価値がないということを意味しています。
この格言はある面ではまだ真実と言えますが、完全に正しいわけではないようです。
カシさんにはインタビューの中で、Antlerがどのようにアイデアに投資しているのかを説明してもらいました。Antlerは基本的には企業に投資しますが、もしアイデアを持って彼らのもとに行けば、そのアイデアをスタートアップに進化させるために多くのリソースを提供してくれるのです。
また、外国人起業家が日本で直面している課題や、日本の創業者は英語が話せないという偏見についても話しました。そして、外国人起業家たちがどのように日本の創業者のスタートアップの立ち上げ方を変えているのかについても深く掘り下げてあります。とても興味深い内容ですので、ぜひお楽しみください。
(全7回シリーズの4回目。第3回目の配信・Part3はこちらでご覧になれます。)

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起業家精神を育むための最適なチーム作り

Antler Japanのパートナーであるサンディープ・カシさん    写真提供:Antler株式会社
Antler Japanのパートナーであるサンディープ・カシさん    写真提供:Antler株式会社
(前回の続き)
ティム・ロメロ(インタビューアー、以下ロメロ):(大学とAntlerが提携して作るスタートアップでは教授がCEOになれないのだとしたら)、CEO(最高経営責任者)は誰が担うのですか?学生ですか?それとも別の経営人材ですか?
サンディープ・カシ(以下、カシ):それは混合型です。例えば、あるスタートアップでは、技術を担っているのは大阪大学の博士課程の学生ですが、ビジネスを担当しているのは東京大学出身の人です。この組み合わせはとても興味深いと思います。アメリカではこうしたケースはよくありますが、日本では大阪と東京が一緒に組むことはほとんどありませんし、東京と京都が連携することもありません。
ロメロ:同じ東京の中でも、部門が違えばほとんど交流しないことがあります。いわば、縦割りの中にさらに縦割りがある状態ですね。
カシ:そうです。Antlerは、特定の大学や政府機関と連携することにこだわりません。私たちの目的は、日本で起業家精神を育むことです。最適な人材を最適なチームにマッチングすることを重視しています。例えば、京都大学出身だからとか、Amazonに勤めていたからという理由ではなく、スタートアップの具体的なニーズに合った人を選びます。最近では、日本のスタートアップに国外からの経営幹部を招いて一緒に働くことも増えてきています。

国内市場から先端技術分野へ、広がるスタートアップ領域

ロメロ:特に注力している分野はありますか?最先端の科学技術を応用するディープテックなどでしょうか。
カシ:最初の2回のプログラムに参加したのは、日本市場向けのスタートアップが多く、ディープテック分野とはあまり関わりがない、主にネット通販(eコマース)や美容など、国内向けのビジネスが中心でした。しかし、第3回目のプログラム(「Antler Residency in Japan - Batch 3 -」)からは、AI(人工知能)分野に進出し、AI関連のスタートアップが3〜4社、医療分野が3社、宇宙技術が1社と、より技術志向の企業が増えてきました。第4回のプログラム(「Antler Residency in Japan - Batch 4 -」)ではさらに幅が広がり、エッジAI(端末上でデータ処理を行うAI技術)やロボット技術、AIを活用した脳疾患の治療、建設分野のスタートアップなども参加しています。
ロメロ:なるほど。日本にはこれらの先端技術分野で素晴らしい技術がありますし、それが実際に形になってきているのは心強いことです。

大学発イノベーションにおける課題

ロメロ:一方で、大学発のイノベーションについては最近よく話題になりますが、誰もが感じている課題があると思います。日本の大学には世界に誇れる研究が数多くあるものの、その成果がなかなか事業化につながっていないという問題です。たとえば10年ほど前に注目を集めた大学発ベンチャーの中にも、教授が主導して多額の資金を集めながら、最終的に製品を市場に出せなかった例が少なくありません。皆、問題の存在は理解しており、解決したいという思いもあります。それでも、なぜこれほど難しいのでしょうか。
カシ:それは「技術が素晴らしいかどうか」という、ひとつの視点でしか物事を見ていないからです。優れた技術があっても、それだけで市場があるとは限りません。多くの場合、課題は技術そのものではなく、その技術をどう実用化し、どう世に出すかという「実行」の部分にあります。どれほど素晴らしい技術でも、米GE(ゼネラル・エレクトリック)のような大企業に行って「買ってください」と言っただけで採用されるほど、現実は甘くないのです。
写真提供:Envato
写真提供:Envato

大学発技術を市場化する最も理想的な形とは?

ロメロ:確かに、それは本当に的を射ていますね。そう考えると、「教授に有望な技術を見つけてもらう」という発想自体が少し無理があるのかもしれません。教授たちには、その技術に市場性があるかどうかを見極めるのは難しいでしょう。では、実際にその分析を行うのは誰ですか? 特許や知的財産を精査して「これは市場で売れる」と見抜くのは、誰の役割なのでしょうか。
カシ:つまり、それは「発掘」の問題です。まずは人の手で地道に見つけ出すところから始めて、将来的にはAIを活用して効率化していくことになるでしょう。
ロメロ:では、実際にそれを探すのは誰なのですか? Antlerのスタッフですか? それとも、あなたですか?
カシ: 私です。私は普段、大学を回って多くの研究者と話をし、彼らがどんな特許を持っているのか、そしてそれがどんな用途に活かせるかを探しています。一方で、企業を訪ねて、どんな課題やギャップがあるのかを把握します。そのうえで、企業で見つけた課題を大学に持ち帰り、そのテーマに取り組むのです。
もし大学の中に市場化の可能性を持つ知的財産があれば、それを企業の課題と結びつけて実用化を進めます。それこそが、大学の技術を社会に送り出すうえで最も理想的なプロセスだと考えています。単なる試作品づくりにとどまらず、企業の仕組みの中に実際に組み込まれ、大学発の技術が社会へと広がっていく形です。

Antlerの役割

カシ: そして、それを実現できるのはAntlerだけだと思います。その理由は、Antlerの世界中のパートナーが、投資家や銀行家ではなく、実際に事業を立ち上げ、運営してきた「オペレーター(起業家)」だからです。彼らの多くは、自ら会社を立ち上げた経験と起業家精神を持ち、さらにそれぞれが専門分野で豊富な知識を持っています。そのため、例えばエネルギー関連企業が新たに事業を広げたい場合、その分野に強いネットワークを持つAntlerの拠点に連絡すれば、現地の企業とつながることができるのです。
(第5回に続く)
第5回では、Antlerが展開するプログラムの地域ごとの違いや、ディープテックとゲームの知的財産(IP)活用について議論します。
[このコンテンツは、東京を拠点とするスタートアップポッドキャストDisrupting Japanとのパートナーシップにより提供されています。 ポッドキャストはDisrupting Japanのウェブサイトをご覧ください]
翻訳:藤川華子 | JStories
編集:北松克朗 | JStories
トップ写真:Envato 提供

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本記事の英語版は、こちらからご覧になれます
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