J-Stories ─ 日本での生活で言葉の壁に直面している外国籍の子供たちに、学校の授業を理解できる日本語力をつけてもらおうと、東京の福祉団体が「100時間の日本語教育」を提供する新しい活動を始めている。
この事業を立ち上げたのは、東京都練馬区に本部がある一般社団法人「外国人の子供たちの就学を支援する会」(石川陽子代表、Supporting foreign children to attend school、sfcs) 。同法人ではこのほど当初の事業資金として170万円をクラウドファンディングで調達した。
同法人によると、日本の小学校の授業を理解できる程度の簡単な日本語を12歳までの外国人の子供が習得するには、約100時間の日本語教育が必要だ。その教育機会を提供できれば、小学校5,785時限、中学校3,045時限分の義務教育を受けることが可能になる。
その100時間のプログラムは、①約10時間かけて、ひらがな・カタカナの読み書きを練習、②約40時間で学校や生活の場面でよく使う言葉を覚える、③約50時間かけて日本語で話す練習をし、自分の気持ちを伝えたり、先生や友達と日本語で話せるようになる―という内容。
初回の受講生として、インドとベトナムから来た5人の子供たちがオンラインの授業を受けており、7月時点で80時間の学習を終えている。授業は原則1日1時間で、講師は同法人の代表である石川さんが運営している日本語研修団体エルロンから派遣したプロの日本語教師が務めている。
少子高齢化が続く日本で外国人労働者の受け入れが進む中、石川さんらは多くの外国籍の子供たちが言葉の壁に阻まれて学校に通えず、必要な教育を受けられない状況が続いていると懸念する。
文部科学省が全国の市区町村の教育委員会を対象に行った調査によると、日本に住む外国籍の子供たちのうち、義務教育である小中学校生の年齢にあたる人数は昨年5月時点で13万3310人。2年前の前回調査時より7.7%(9480人)増加した。
不就学(学校に通っていない)のおそれがある子供は、実態がわからないケースも含めると、10,046 人だった。この数は前回調査時より48.4%( 9,425 人)少ないが、日本では今なお義務教育年齢にある1万人以上の外国人子弟が学校教育を受けていない可能性がある。石川さんによれば、「日本語がネックになっている」ことが学校に行かない理由の一つだという。
こうした子供たちを支援するうえでの大きな障害は、日本語教師の不足だ。子供たち同士で会話をするための日本語、また学校の授業についていくための日本語など、日本での暮らしになじんでいくためには様々なシーンに合わせた日本語力が必要になる。そういった多様な日本語を教えることができるプロの日本語教師が不足している、と石川さんは指摘する。
同法人では、今後もクラウドファンディングなどで資金を確保しつつ、外国籍の子供たちへの支援を広げたい考えだ。
法人の理事長を務めているタレントの小原ブラスさんは、自分自身も6歳ごろに来日し、外国籍の子供として日本語の難しさに苦労した体験を持っている。
小原さんは、言葉の壁を乗り越えるための支援の必要性を訴えるとともに、ボランティアではなくプロの日本語教師を雇い、授業を行っている同法人の取り組みを少しでも多くの日本人に知ってもらいたいと話している。
記事:高畑依実 編集:北松克朗
トップ写真:ijeab / Envato
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