J-STORIES ー 塩分を取りすぎると高血圧などの発症や重症化につながるリスクがある、とわかっていても、減塩食は味気なく、食生活の改善はなかなか進まない。そんな悩みを電気の力で解消しようという新しい食器の開発が実用化に向け進んでいる。
今年4月に発表された「箸型」デバイス。「(美味しいものを食べるという)人の幸せを維持したまま健康を実現したい」との思いを込めて、明治大学(東京中野区)の宮下研究室とキリンホールディングス(東京中野区)が共同研究で開発した。
箸デバイスは、人体に影響しないごく微弱な電気によって、食品の中に含まれる塩味やうま味の素となるイオンの動きを調整し、疑似的に食品の味の感じ方を変化させる。箸から発生する電気刺激の波形は「電気味覚」とも呼ばれ、減塩食品の味わいを増強させることができる。
研究チームは、減塩の食生活を送る人々を対象にした臨床試験で、箸型デバイスを用いると、減塩食を食べたときに感じる塩味が1.5倍程度に増強されることを世界で初めて確認した。
電気味覚の研究を10年以上行っている明治大学の宮下芳明教授は、「味を効果的に出す原理はわかっている。この知識に合わせて減塩食品の化学的組成減塩食品の組成を最適化すれば、電気味覚のデバイスとの相乗効果が狙え、味の感じ方は1.5倍以上の効果を出すこともできると考える。」とし、「味が薄くなったことを感じさせないまま、塩分摂取量を半分以下に減らせることができたら最高だ」
箸型デバイスは2023~2024年にも一般向けの発売を目指す。宮下研究所ではすでにお椀やラーメンのレンゲ型デバイスも作製しており、今後はキリンホールディングスと共同で実用化に向けたスプーンやフォークのカラトリーや、お椀などの食器全般の開発も検討している。
キリンホールディングスはJ-Storiesの取材に対し「生活習慣病の発症、重症化を予防する1つの手段として、国内での実用化をまずは目指していきたい」と答えている。
記事:澤田祐衣 編集:北松克朗
トップ写真:gstockstudio/ Envato
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