大阪と東京で開催、最大級の日台スタートアップイベントが成功裏に閉幕

都知事も登壇。約75社の革新的なスタートアップが参加した過去最大規模のスタートアップショーケースとなった

In partnership with Startup Island TAIWAN

8時間前
by JStories
大阪と東京で開催、最大級の日台スタートアップイベントが成功裏に閉幕
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JStories ー 台湾の政府官庁である国家発展委員会が主導するスタートアップブランドStartup Island TAIWANが主催し、大阪と東京で開催した二つの大型スタートアップイベントが2025年夏、昨年を上回る盛り上がりのうちに成功裏に幕を閉じた。大阪・京都で行われた「2025 Taiwan Tech Week」関連イベント(8月20日〜22日)と、東京で開催された「2025 日本・台湾イノベーションサミット」(8月25日〜26日)には、合わせて約75社の革新的なスタートアップが参加。行政関係者、ベンチャーキャピタルなどの投資家、協業を模索する企業関係者など双方のスタートアップコミュニティによる活発な交流が行われた。
Caption: 左は大阪「2025 Taiwan Tech Week」イベント、右は東京で開催「2025 日本・台湾イノベーションサミット」での集合写真  写真撮影: Emi Takahata |JStories (以下同様)
Caption: 左は大阪「2025 Taiwan Tech Week」イベント、右は東京で開催「2025 日本・台湾イノベーションサミット」での集合写真  写真撮影: Emi Takahata |JStories (以下同様)

8月20日|都市イノベーションの未来を創るAIソリューション

イベントの先陣を切ったのは8月20日に万博会場として盛り上がる大阪で開催された1日限定イベント「都市イノベーションの未来を創るAIソリューション」。梅田で行われたこのイベントは「2025 Taiwan Tech Week」の一環として開催されたもので、最先端のAIソリューションを持つ台湾のスタートアップが集結し、大阪・関西のスタートアップ関係者と交流を広げる機会となった。
イベントのオープニングでは、主催者であるStartup Island TAIWANのディレクター、烏仕明(ウー・レオ)氏が登壇した。2023年以降の2年間で、大阪をはじめとする関西エリアに展開する台湾スタートアップの数が2倍の40社以上に増加したことを紹介。今後も、大阪をはじめ関西エリアでの地方自治体とのパートナーシップ強化するとともに、新たな領域にも積極的にアプローチし、Startup Island TAIWANとしてさらなる拡大を目指していくと挨拶した。
今後3年で100社ほどの台湾スタートアップが奨励金として台湾政府から資金を受けグローバル展開を目指すと話すStartup Island TAIWANの烏仕明氏
今後3年で100社ほどの台湾スタートアップが奨励金として台湾政府から資金を受けグローバル展開を目指すと話すStartup Island TAIWANの烏仕明氏
続いて、SMBC(三井住友銀行)の前川卓郎部長が登壇。日本はまだキャッシュレス化への動きが遅く課題があるとしながらも、大阪・関西万博の開催を受けて、多くの最先端スタートアップやコミュニティが盛り上がりを見せる。同社としても「完全なキャッシュレス決済を目指して活動する」と語り、その為にも台湾などの最先端スタートアップとの協業が欠かせない、とアピールした。
今年行われている関西万博に出展するパビリオン「住友館」やイノベーションの意気込みを話すSMBCの前川氏
今年行われている関西万博に出展するパビリオン「住友館」やイノベーションの意気込みを話すSMBCの前川氏
この日のハイライトは、韓国出身のDavid Bae氏(日本スタートアップBIG Impact株式会社)、マレーシアのEncognize GKのCOOであるBrian Lim氏、オーストラリア人のJoshua Flannery氏(Innovation Dojoグループの共同設立者兼CEOで、日本とオーストラリアを繋ぐ活動を行う)が参加した国際的な座談会だ。
座談会では、過去のクロスボーダー事例や、シリコンバレーをはじめとする海外スタートアップの日本進出、国内スタートアップの海外展開例などを参考に、日台だけでなく、韓国・ASEAN・豪州などアジア太平洋地域における今後の連携の可能性が議論された。
ここで強調されたのは、日本市場を目指すスタートアップにとって大阪、関西圏の市場の重要性だ。海外企業は、東京だけを日本進出のターゲットにしがちだが、関西圏が単独で創出するGDPの規模の大きさを考えると、大阪・関西への進出も有効であるとの議論がなされた。
日台韓・ASEAN・豪州の共創事例と今後の連携の可能性について議論をするゲスト登壇者たち。左からStartup Island TAIWANの烏仕明氏、Brian Lim氏、David Bae氏、Joshua Flannery氏
日台韓・ASEAN・豪州の共創事例と今後の連携の可能性について議論をするゲスト登壇者たち。左からStartup Island TAIWANの烏仕明氏、Brian Lim氏、David Bae氏、Joshua Flannery氏

8月21日|台湾起業家の日

続いて2日目の8月21日には「台湾起業家の日」と題した台湾のスタートアップCEOやCTOら幹部によるピッチイベントが開催された。ピッチイベントには、自動運転、エネルギーIoT、スマート駐車、衛星通信など幅広い分野をリードする注目スタートアップ13社が登壇し、未来型ライフスタイルを支える最新技術や事業戦略を発表した。なかでも家庭・事業者向けに、再生可能エネルギーを効率的に活用できる電力のマネジメントシステムを提供提供するNextDriveは、2017年の日本進出以降、東京電力・中部電力と連携し、2022年には「新エネ大賞」を受賞したほか、大阪・関西地域でも既に受注実績があるなど注目を集めており、この日のピッチでも2027年には日本での株式上場を目指しているとアピールした。
投資家や他のスタートアップとの交流の場として活用
投資家や他のスタートアップとの交流の場として活用
また、2日間にわたるイベント期間中、会場には台湾スタートアップ企業による展示ブースも設けられた。展示エリアでは、実際に体験できるスペースなど、会場を訪れた一般来場者が各社の最新テクノロジーを体験する姿がみられた。
その中の一人で、昨年の同イベントにも参加したという大阪商工会議所国際部の武田庸平氏は、JStoriesの取材に対し「今年は万博開催の年ということもあり、前年に比べ、本格的に始動しているレベルの高いスタートアップが集まっていると感じた」と語った。
Caption: umeda10の展示会場で、デモンストレーションをするイベント参加者の一人
Caption: umeda10の展示会場で、デモンストレーションをするイベント参加者の一人

「2025 日本・台湾イノベーションサミット」ハイライト

大阪イベントの4日後、今度は東京で第4回目となる「2025 日本・台湾イノベーションサミット」が開催された。昨年2024年には30社の台湾スタートアップが参加したが、今年は45社へと大幅に増加。日本市場への挑戦を本格化させる台湾企業が、次々と新たな可能性を切り拓こうとしている。
8月25日、帝国ホテル東京で行われた初日のイベントの冒頭では、AIや半導体政策などを主導する台湾国家発展委員会の当時の委員長(大臣相当)であり、今回サミットの台湾側の団長でもある劉鏡清(リュウ・キョウセイ)委員長が登壇。「台湾の今年上半期のGDPは6.7%という高い成長率を誇り、この好成績の背景にはスタートアップの活躍がある」と強調した。こうした成長を維持する為にも、今後もスタートアップへの投資や資金活動を支援するとした上で、「日本は台湾と多くの文化的共通点を有し、互いに補完し合える関係が築きやすいことから、国際市場に進出する際の最初の拠点となる」と日本との関係強化に期待感を示した。
帝国ホテル東京で行われた初日の開会式でスピーチする劉委員長
帝国ホテル東京で行われた初日の開会式でスピーチする劉委員長
続いて、昨年2024年にStartup Island TAIWANとの間でスタートアップ支援に関するMOU(覚書)を締結した東京都を代表して小池百合子知事も登壇し、今年7月に台北で台湾との共同イベントを開催し、東京からは5社のスタートアップが参加するなど、日台のスタートアップエコシステム連携の強化やプロモーション促進を図っていることを説明。今後も、台湾と東京の間に大きな橋をかけ、イノベーションを生み出していきたいと語った。
第4回日本・台湾イノベーションサミットに登壇する小池知事
第4回日本・台湾イノベーションサミットに登壇する小池知事

8月25日|CVC戦略とクロスボーダーM&A─日台連携の最前線

この日のハイライトの一つは、Z Venture CapitalやSony Venturesなど台湾の有力VCが参加し、SparkLabs Taiwan代表のEdgar Chiu氏がモデレーターを務めたCVCセッション。日台スタートアップエコシステムの成長と資本・事業連携の加速を目的に企画されたこのセッションでは、台湾の「Global Bridge」プログラムや日本を起点としたハブ設置といった国際連携の動きを背景に、半導体やAIなどディープテック分野での協力を通じて、両国が共有する少子高齢化などの社会課題の解決に向けた「CVC 4.0」時代の投資戦略やパートナーシップの可能性が議論された。
企業とスタートアップによる戦略的・長期的パートナーシップの構築を議論するパネルディスカッションでは左から、Edgar Chiu氏、德田 享将氏、Daniel Song氏、Ryan Kuo氏、今野 寿昭氏が登壇
企業とスタートアップによる戦略的・長期的パートナーシップの構築を議論するパネルディスカッションでは左から、Edgar Chiu氏、德田 享将氏、Daniel Song氏、Ryan Kuo氏、今野 寿昭氏が登壇
もう一つのハイライトは、日台のクロスボーダーM&Aをテーマにしたパネルディスカッション。モデレーターは、年間約40件ものM&Aを実行しながら急成長を遂げるSHIFT社でグループ経営推進部長を務める小島秀毅氏が務め、パネリストには91APP*-KY CFOのMay Kao氏、USPACE CEOのAllen Sung氏、Appierコーポレートディベロップメント責任者のYing Wei Chen氏など、M&A実務の最前線に立つ経営幹部たちが集結。豊富な実務経験に基づく視点から、日台におけるM&A最新動向や事業拡大の可能性について議論した。
M&Aの最新動向と市場参入戦略について。左から、小島 秀毅氏、May Kao氏、Allen Sung氏、Ying Wei Chen氏が登壇
M&Aの最新動向と市場参入戦略について。左から、小島 秀毅氏、May Kao氏、Allen Sung氏、Ying Wei Chen氏が登壇

8月26日|台湾スタートアップ最大規模のピッチ&Tokyo Hub 1周年記念イベント

翌日、8月26日には、東京丸の内のTokyo Innovation Base(TIB)に会場を移し、台湾のAI、スマートシティ、ヘルステック分野などの革新的スタートアップ約40社が参加したピッチイベントが行われた。会場には、台湾の多様な最新技術に関心を持った日台のスタートアップ関係者や投資家が集まり、活発な交流が行われた。
当社代表でJStoriesの編集長、そしてStartup Island TAIWANの日本共同代表の前田 利継が1周年記念の挨拶を行う
当社代表でJStoriesの編集長、そしてStartup Island TAIWANの日本共同代表の前田 利継が1周年記念の挨拶を行う
一方、イベント終了後には、昨年の「2024 日本・台湾イノベーションサミット」に合わせてStartup Island TAIWANが開設したTokyo Hubで、開設1周年を祝う記念式典が行われた。式典では、これまでの活動成果や今後の展望が参加者に共有された他、本イベントの公式メディアパートナーであるJStoriesの前田利継編集長も登壇し、取材活動を通じて見えてきた日台連携の可能性や、スタートアップが国境を越えて挑戦する意義について語った。
大阪から東京まで駆け抜けた4日間の台湾スタートアップイベントは、こうして、日台連携が次のステージへ進む予感を強く残して幕を閉じた。
イノベーションサミットに初回から参加しており、日本における台湾スタートアップに詳しい桜美林大学の大学院特任教授の山田周平氏はJStoriesの取材に対し、日台の今後の協力関係についての展望として「台湾がいわゆる半導体などのハイテクが発達した場所だと、最近日本社会でも認知されてきた」と評価した上で、「今後も大きくハイテク分野と観光分野の部分で協力を広げるチャンスがあると思う」と話した。
Startup Island TAIWAN東京Hub開設1周年記念に参加し、登壇をした山田 周平氏
Startup Island TAIWAN東京Hub開設1周年記念に参加し、登壇をした山田 周平氏
また、台湾国家発展委員会の劉鏡清委員長は、今回のイベントを振り返り、「台湾スタートアップを温かく受け入れてくれる日本に改めて感謝している。日本のスタートアップの情熱、そして日台友好の絆から今後さらなる協力成果が生まれることを楽しみにしている」とJStoriesに語った。
JStoriesの取材に応じる劉委員長
JStoriesの取材に応じる劉委員長

イベント概要:

名称2025 都市イノベーションの未来を創るAIソリューション
日時:2025年8月20日(水)13:00~17:00 
会場:NORIBA 10 Umeda(阪急阪神 MEETS内)〒530-0015 大阪市北区芝田1丁目1番3号 
言語:英語・日本語(AI同時通訳あり)
後援:2025年日本国際博覧会協会

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名称:台湾起業家の日
日時:2025年8月21日(水)13:30~17:30 
会場:NORIBA 10 Umeda(阪急阪神 MEETS内)〒530-0015 大阪市北区芝田1丁目1番3号 

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名称:Bridging Day
日時:2025年8月25日(月) 
会場:帝国ホテル(東京都千代田区内幸町1-1-1)
主催:Startup Island TAIWAN(台湾国家発展委員会支援)
言語:中国語と日本語 (同時通訳あり)

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名称:Startup Pitch
日時:2025年8月26日(火) 
会場:Tokyo Innovation Base(TIB)(東京都千代田区丸の内3-8-3)
主催:Startup Island TAIWAN(台湾国家発展委員会支援)
言語:中国語と日本語 (AI通訳によるもの)

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記事:JStories
トップ写真: Emi Takahata | JStories
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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